柳葉さん
 
あなたに降っている雪は何色ですか?
 
俺は今、どこもかしこも真っ白な雪の中にいます。
これまでの時間の中で、一番あなたと居られた時(とき)も、そう言えば雪の舞う季節だった気がする。
 
今あなたの目にしている雪は、淡い桜の花びらの色をした雪なんじゃないかな。
その雪が、あなたの心の中一杯に降り積もっているんじゃない?
幸せそうに、顔なんかもう嬉しすぎてさ、クシャクシャになっちゃってるのが見えそう。
だって、俺が一番好きだったあなたの表情だからね。
 
 
だからさ、柳葉さん。
さよならしよう。
 
あなたは優しい人だから。
自分からは言えないでしょう?
あなたからじゃ無理だよ・・・・・
だから、俺から。
元々、追いかけたのは俺だし。
追い詰めたのも俺だから。
終わりも俺が終わらせるね。
 
この手紙に封をしたら、あなたのことを好きだった自分にもさよならする。
あなたのことを知らなかった、5年前の俺に戻るんだ。
あの頃の、俺に。
 
あなたが幸せでいてくれるなら、それでいい。
今のあなたは幸せでしょう?
あなたが幸せなのなら、俺があなたのこれからを案じ、祈る為の時間も必要なくなる。
もう、必要ないもの。
 
だってあなたには見えるでしょう?
あなたに差し伸ばされている手が。
あの人の華奢な手の、何処にそんな強さが潜んでいるのか。
あなたを愛し、守り、共に生きて行こうと差し伸ばされている手。
そして、あなたの為、あなたに愛される為に生まれてきたのだと、まだ紅葉のような小さな小さな手の平を一杯に広げて、
あなたに差し伸ばされているもう一つの手。
差し伸ばされた手を取って。
離しちゃ駄目だよ。
しっかりと握り締めて、決して離さないで。
あなたが幸せであるために。
あなたが幸せならばこそ、俺はもうあなたの事を想わずにいられるんだから。
 
 
だから、ありがとう。
だから、さようなら。
 
 
織田裕二